知識を効率よく身につけるための、復習方法のベストプラクティスを考える

質問箱にこんな質問がきたので、「知識を効率的に身につけるための復習方法」について自分の考えをまとめてみようと思います。

問題集の復習の仕方を確立できず、成績が伸び悩んでいます。復習の仕方(極端な例を出せばすべての問題を紙に書いて解くのか、それとも問題と解説を読み込むだけで済ませるのか)、復習の頻度について、できるだけ細かく教えてほしいです

・復習のコツは「頻度」と「思い出す」こと ・復習の効率を最大化するための「予習」 ・自分で得た知識を実践することも大事だよ

前提: なぜ復習をするのか

まず、質問に答える前に明確にしておきたいことがあります。

復習の方法のベストプラクティスを聞かれても、当然ながら人それぞれなので一概には言えないし、声に出すほうが覚えやすい人もいれば書いてるほうが覚えやすいという人もいます。

大事なのは「復習は、その知識を自分の解くべき問題で活用できる状態にするため」であるという目的です。

サトゥー

これさえ達成できれば、ぶっちゃけどんな方法をとろうが、どうだっていいのです。

この目的を常に明確に意識しながら、自分の記憶の定着の程度や実感に応じて、適宜方法を変えていけるような柔軟な考えをもつことを前提にしましょう。

復習の目的は「その知識を自分の解くべき問題で活用する」こと。これを達成できればどんな手段でも良いということを意識する。

復習をするうえで意識しておきたい4つのポイント

さて、以上を前提としたうえで「復習方法のベストプラクティス」なるものがあるとすれば何だろうという観点から、自分が考える4つのポイントを紹介します。

1. 記憶の定着のためには「復習の頻度」が大事

復習方法の話では定番の「エビングハウスの忘却曲線」をご存知でしょうか?

エビングハウスの忘却曲線

この忘却曲線で大事なのは、「一回一回の分量」ではなく「回数・頻度」によって記憶の定着は向上していくということだと思います。

記憶を定着させるには、一気にガッとやるよりも、一日に何度も見るくらいの方が効率が良いのです。

case. 単語を何度も見て暗記する

その日に覚えたい単語を50個ピックアップして、朝の電車で1回、昼休みに1回、帰りの電車で1回、寝る前に1回見る。これで1日に4回も、覚えたい単語をみることができている。

case. 以前やったことを定期的に確認する習慣をつける

「今日やったこと」「3日前やったこと」「1週間前やったこと」「1ヶ月前やったこと」を見返せるようにして、毎日確認する。これだけで4回の復習が自動で出来るようになっている。

2. 記憶の定着のためには「思い出すこと」が大事

毎回毎回はじめて解くような感覚で臨んでいるようでは当然、いつまでたっても知識は身につきません。

記憶の定着のためには、頭を使って以前やったことを「思い出す」ことが重要であると言えます。

じゃあ、記憶に残すためには何が大事なの?」って話なわけですが、その答えは、とにかく”想起練習”をすることというのも数々のメタ分析によって、「記憶に残すには”想起練習”が最強の学習法だ」ということが分かっています。

【受験生は知らないと損】最新の認知心理学が証明した、間違った勉強法、正しい勉強法#1|清水陽介@ゆるふわメンタリスト|note

“想起練習”(=retrieval practice)、つまり「思い出すこと」がとにかく大事だと。
具体的なアクションを考えてみましょう。

キーワードだけから内容をどんどん思い出していく練習

case. 「直角」などのキーワードから

直角といえば数学で言うと直角三角形が思い出せるな。三平方の定理は $a^2 + b^2 = c^2$ ってやつだったよね。あとは三角比。 $\sin{\theta}, \cos{\theta}, \tan{\theta}$ の定義はこうだったね。

三平方の定理、三角比

円の直径ってのもあったね。直径に対する円周角は90°だったよね。

あとは円の接線とか。円の中心と接点を結ぶと直径が出来るな。接線でいうと、こんな関係式もあったね。似たようなやつでは、弦の中点と円の中心を結んでも90°ができるね。

直径に対する円周角、円の中心と接点
case. 参考書の目次(キーワード)から

やっとこの参考書も読み終わったな。目次から内容を思い出せるかやってみよう。1章の力学ではまず、運動方程式が $m \vec{a} = \vec{F}$ だったよね。力図をこんなふうに書いて視覚的に理解することが大事で、…

その日の授業の内容を思い出す練習

case. 思い出しながらまとめてみる

今日の2限の数学の授業では、二次曲線をやったっけ。最初に楕円をやったんだよね。基本式はこうで、これはグラフで表すと、こんなかんじ。このとき、こんな関係式が成り立って…自分なりにまとめてみよう。

case. テストにして後日実施する

せっかくだから、今日の授業内容をテスト形式にして、明日の休み時間にみておこうかな。…

3. 予習をして、整理すること

知識の定着のためには、予習をすることも大事だと思っています。理由は大きく2つ。

予習が大事な理由

  • 知っていることと知らないことを明確にする
  • 事前にあれこれと考え尽くす

知っていることと知らないことを明確にするための予習

予習は問題集で言うところの「1周目」にあたります。

予習をすることで、「自分は何を知らないのか」が明確になり、講義を「覚えるべきポイント」に絞って受講することができます。

サトゥー

極論、それ以外は聞かなくても良いわけです。

自分も数学の授業はこのようなスタイルで受けていました。予習でしっかり解けて、疑問点もなく、考えられる別解もしっかり出し切れたなら、ぶっちゃけ授業を聞く意味はまったく無いわけです。内職なりなんなり、自分のためになることをやってもいいと思っています。

事前に予習してあれこれと考え尽くすことで、記憶は定着しやすくなる

事前に予習をしてめちゃくちゃ考えて、それでも分からなくて授業で解答を聞いてみると「あぁァァァァなるほど〜〜〜!!!」ってなる体験、したことないですか?

この「あ〜なるほど〜!!!」という体験は記憶を強いものにします。
事前にわからなくてもしっかりと考え尽くして、「あ〜なるほど!!!」の準備をすることが大事だと思っています。

サトゥー

「なるほど!」のポイントって人それぞれだし。

4. 実践をして、再構築すること

これ結構オススメなのですが、獲得した知識を自分の言葉で説明してみると、記憶の定着がめちゃくちゃ早くなります。

具体的には、次の方法が考えられます。

自分で解説してみる

ぼくは勝手にセルフレクチャーって呼んでいます。
自分なりに授業するだけです。それだけ。
コレって意外と難しくて、それを知らない人に対してどれだけ噛み砕いて説明できるかという、かなり重要なスキルが身につきます。

授業をするというのはある意味責任が伴うわけで、間違ったことは言えないし、分かりにくくてもダメなわけです。そういう観点で実践してみると、自分の知識が整理され、記憶が定着されます。さらに、理解が曖昧な点も明確になります。

だれかに教えてみる

もしその知識を必要とする人が周りにいるのなら、その人に実際に教えてみましょう。
もちろん相手の時間の無駄にならないことが前提ですから、必然的に相手に聞いてもらう価値のあるような授業をすることになり、結果として説明がうまくなります。
当然、そのプロセスで知識は定着します。

まとめてみる

人に教えるのが苦手な人は、紙などにまとめてみるのも有効です。自分もよく知識をなるべく体系的にまとめるようにしていました。(当時は数学の鉄則集とかいうイキリまとめノートを持っていました)

もちろん自信がある方はネット上に流してみるといいですね。不特定多数の人間が見てくれますから、知識のまとめとしても質の高いものができるようになります。

まとめ

ここまで、復習の目的と、目的達成のために自分が考える4つのポイントを紹介しました。ぜひ皆様も、普段の勉強に役立てていただけると嬉しいです。

まとめ

  • 復習の頻度が大事
  • 思い出すという行為が大事
  • 予習が大事
  • 実践をすることが大事

質問への解答

さて、ここまで一般論を散々述べてきたので、最後に具体的に質問者さまへの回答を簡単にしてみたいと思います。

復習の仕方

ものによりますが、問題ごと覚えたいものは問題ごと書き写している場合もありました。面倒なときや、紙に書く時間がもったいないときは頭の中で済ませても結構だと思いますし、そのような場面が多い方が健全な状態かと思います(全部紙に書くのもナンセンスな気がするので)

復習の頻度

上に書いたcase. はすべて自分がやっていたことです。参考まで。

この記事を書いた人

サトゥー

東大学際情報学府M1。情報科学と教養の海に溺れています。面白いことをやるのがすきです。