2020年 北海道大学理系数学 第1問の解説をしてみます。
エレガントな解法の類はやりません。あくまで、試験場で自分が解くとしたらどう考えるかな〜という観点で見ています。
三角形 $\mathrm{ABC}$ について
\begin{align*}
|\overrightarrow{\mathrm{AB}}| = 1, |\overrightarrow{\mathrm{AC}}| = 2, |\overrightarrow{\mathrm{BC}}| = \sqrt{6}
\end{align*}が成立しているとする。三角形 $\mathrm{ABC}$ の外接円の中心を $\mathrm{O}$ とし、直線 $\mathrm{AO}$ と外接円との $\mathrm{A}$ 以外の交点を $\mathrm{P}$ とする。
(1) $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ と $\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ の内積を求めよ。
(2) $\overrightarrow{\mathrm{AP}} = s \overrightarrow{\mathrm{AB}} + t \overrightarrow{\mathrm{AC}}$ が成り立つような実数 $s, t$ を求めよ。
(3) 直線 $\mathrm{AP}$ と直線 $\mathrm{BC}$ の交点を $\mathrm{D}$ とするとき、線分 $\mathrm{AD}$ の長さを求めよ。
2020 北海道大学理系
解いてみた感想
北大の理系は本当に標準的ないい問題を出しますよね。本問はベクトルの基本的な処理ができれば難なく完答できる問題ですので、なるべく完答したい問題ではあります。
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(1) 余弦定理の形
めちゃくちゃよく出るので覚えちゃいましょう。余弦定理を使って内積を求めるパターンのやつです。
内積と余弦定理
三角形 $\mathrm{ABC}$ について、余弦定理より
\mathrm{BC}^2 = \mathrm{AB}^2 + \mathrm{AC}^2 – 2 \cdot \mathrm{AB} \cdot \mathrm{AC} \cos{\angle{\mathrm{BAC}}}
\end{align*}
よって、
\overrightarrow{\mathrm{AB}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{AC}} = \frac{\mathrm{AB}^2 + \mathrm{AC}^2 – \mathrm{BC}^2}{2}
\end{align*}
これより、
\overrightarrow{\mathrm{AB}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{AC}} & = \frac{\mathrm{AB}^2 + \mathrm{AC}^2 – \mathrm{BC}^2}{2} \\
& = – \frac{1}{2}
\end{align*}
となります。
(2) 外心の性質
(2) も典型問題です。
三角形の外心と言われたら何よりも思い出さなければいけないのは「各辺の垂直二等分線の交点」になっていること。これを活用して $s, t$ を求めます。
まず、$\mathrm{AP}$ が外接円の直径になっていることから、
\overrightarrow{\mathrm{AO}} = \frac{1}{2} \overrightarrow{\mathrm{AP}} = \frac{s}{2} \overrightarrow{\mathrm{AB}} + \frac{t}{2} \overrightarrow{\mathrm{AC}}
\end{align*}
線分 $\mathrm{AB}$ 、線分 $\mathrm{AC}$ の中点をそれぞれ $\mathrm{M}$, $\mathrm{N}$ とおいてやると、$\mathrm{MO}$, $\mathrm{NO}$ が辺の垂直二等分線であることから次の2式が成立します。
\overrightarrow{\mathrm{AB}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{MO}} = 0 \\
\overrightarrow{\mathrm{AC}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{NO}} = 0
\end{align*}
これを $|\overrightarrow{\mathrm{AB}}| = 1$, $|\overrightarrow{\mathrm{AC}}| = 2$, $\overrightarrow{\mathrm{AB}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{AC}} = – \frac{1}{2}$ を用いて変形すると
2s – t – 2 = 0 \\
-s + 8t – 8 = 0
\end{align*}
結局、
s = \frac{8}{5}, t = \frac{6}{5}
\end{align*}
が得られてめでたしめでたし。
(3) 直線BC上に存在する条件
これも典型ですね。
とりあえず、 $\mathrm{D}$ は 直線 $\mathrm{AP}$ 上の点であることから、 (2) の結論をふまえ、実数パラメータ $k$ を用いて
\overrightarrow{\mathrm{AD}} = k \overrightarrow{\mathrm{AP}} = \frac{8k}{5} \overrightarrow{\mathrm{AB}} + \frac{6k}{5} \overrightarrow{\mathrm{AC}}
\end{align*}
と表現できます。このように表される $\mathrm{D}$ が直線 $\mathrm{BC}$ 上にある条件は、$ \overrightarrow{\mathrm{AB}}$ と $\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ の係数の和が1になること、つまり
\frac{8k}{5} + \frac{6k}{5} = 1 \Leftrightarrow k = \frac{5}{14}
\end{align*}
よって、改めて
\overrightarrow{\mathrm{AD}} = \frac{4}{7} \overrightarrow{\mathrm{AB}} + \frac{3}{7} \overrightarrow{\mathrm{AC}}
\end{align*}
あとは長さを求めるだけです。
\mathrm{AD} & = \sqrt{{|\overrightarrow{\mathrm{AD}}|}^2} \\
& = \frac{1}{7} \sqrt{{|4 \overrightarrow{\mathrm{AB}} + 3 \overrightarrow{\mathrm{AC}}|}^2} \\
& = \frac{2 \sqrt{10}}{7}
\end{align*}