今日はリクエストがあったので、ハイレベル理系数学(通称: ハイ理)という参考書について紹介します。
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先に言っておくと、数学を圧倒的に武器にしたい or 心から楽しみたい人以外にはオススメできません

ぶっちゃけハイ理の難易度ってどうなの?

よく「東大・京大・東工大や医学部合格のために必要ですか?」と聞かれることがありますが、必要かどうかで言うと不要です。(東大理三くらいになってくると話が変わってくるかも)
レベル的には合格最低点は取れて(つまり合否を分ける程度のレベルの問題は取れて)その上で差をつけたいときに役立ちますね。
ハイレベル理系数学は本気の入試問題揃い
50問の例題から150問の演習問題まで、すべてに入試数学の本気を感じます。思考力をグッと高められる問題や、入試の難問としてよく出るテーマ(破産の確率など)がしっかり収録されており、やりごたえはバツグンです。
たとえば。
関数 \(f_{n} (x) \) を次のように定める。
\(f_{1} (x) = x ^ 3 – 3 x \\ f_{n+1} (x) = {f_{n} (x)}^3 – 3 f_{n} (x) (n \geq 3) \)
このとき、以下の問に答えよ。
(1) \(a\) を実数とする。\(f_{1} (x) = a \) を満たす実数 \(x\) の個数を求めよ。
(2) \(a\) を実数とする。\(f_{2} (x) = a \) を満たす実数 \(x\) の個数を求めよ。
(3) \(n\) を \(3\) 以上の自然数とする。\(f_{n} (x) = 0 \) を満たす実数 \(x\) の個数は \(3^n\) であることを示せ。
04. 東大理系
異常に難しいわけではないが、かなり難しい
アホほど難しい問題が収録されているわけでは無いのですが、収録される問題はかなり難しい問題であることは事実です。入試本番で解くことができたら間違いなく大きなアドバンテージになるようなレベルであることは意識しておいてください。
ハイ理と新数学演習、どっちがムズイの?
よく同じレベルの参考書としてハイレベル理系数学と比較される、大学への数学シリーズの最高峰、新数学演習(通称: 新数演)という参考書があります。
自分は受験生時代どちらもやりましたが、レベルの差はそこまで無かったような気がします。新数学演習のほうが今の入試に出そうな問題が収録されているかな。
ハイレベル理系数学の扱う分野
扱う分野と内容は以下のようになっております。(いずれもレベルは高いです)
1. 数と式・論証 | 整数問題・多項式・証明問題 |
2. 関数と方程式・不等式 | 方程式の解や最大最小問題 |
3. 平面・空間図形 | 幾何っぽい雰囲気 |
4. 図形と方程式 | 定量化できる図形問題・通過範囲 |
5. 三角・指数・対数関数 | 各分野の応用問題 |
6. 微分法 | (難関入試基準で)基本的な微分の扱い |
7. 積分法 | (難関入試基準で)基本的な積分の扱い・求積 |
8. 数列 | 数列が絡んだ難しい問題、難しい |
9. ベクトル | ベクトルというか定量化できる図形問題 |
10. 場合の数と確率 | 頻出から有名テーマまで内容充実、オススメ |
11. 複素数平面 | 数式から図形まで、”シムソンの定理” |
12. 式と曲線 | 計算がダルい2次曲線、ムズい私大医学部系 |
13. 関数と数列の極限 | 典型がだいたい揃ってる、オススメ |
14. 微分法とその応用 | 極限とか運動とか、ちょっと癖のあるテーマ |
15. 積分法とその応用 | 数Ⅲ積分の中盤〜後半 |
ハイレベル理系数学の主な構成
主な構成は次のようになっています。ハイレベル理系数学は、何か特定のテーマに沿って解説がなされるような参考書ではなく、問題演習のための問題集だと捉えておいてください。
すでにハイレベルな例題
例題から相当ハイレベルなものが並んでいます。
例えばこんな問題。
\(xyz\) 空間内に定点 \(A (1, 1, 0) , B (-1, 1, 0) \) がある。いま、点 \(P\) が \(yz\) 平面上の半円
$$ x = 0, y ^ 2 + z ^ 2 = 2, y \leq 0$$
の上を動くとき、三角形 \(PAB\) の周および内部の点全体で作られる立体 \(K\) を考える。
(1) 平面 \(x = t\) による \(K\) の切り口はどのような図形か。
(2) \(K\) の体積を求めよ。
86. 阪大理系
めちゃくちゃ簡潔だが別解豊富な解答
簡単な方針とシンプルで簡潔な解答が、場合によっては5つ程度も載っています。
それぞれ違った切り口から問題を解いており、これを読むだけでもかなり勉強になります。
大量の演習問題
例題が数問終わったら、演習問題が各章で10問ずつ程度収録されています。どれもやりごたえのある手強い問題になっており、所見で解くためには相当の経験が必要とされます。
基本的にはこれだけ。単純でスッキリとした構成になっていますね。
ハイレベル理系数学のメリット・デメリット

特徴と内容と構成が分かったので、ここからはメリットやデメリットをお伝えします。
ハイレベル理系数学のメリット・おすすめポイント
決して悪問ではない、レベルの高い良問揃い
難しい問題といっても色々な種類がありますが、ハイレベル理系数学に収録されている問題は「計算が鬼なだけのクソ問題」や「知らないと絶対解けない知識問題」のような悪問の類ではなく、すべてが受験数学力を高めるための洗練された良問となっています。

ただ難しすぎるってだけで、問題選定に関してはなかなか神だと思ってます
別解が豊富
これだけしっかりした本気の問題に対して、複数の別解が紹介されている(特に例題)ので、1問から得られる学びの量が数倍になっています。これは他の問題集にはなかなかない魅力なのではないでしょうか。
数学が間違いなく武器・得点源になる
ハイ理に収録されているような難易度の高い入試問題に対して、複数の視点からアプローチし、理解を深める事ができれば、受験において数学は間違いなく武器になります。
なんか表紙のデザイン・サイズ感好き
完全に主観です。ぼくは受験参考書の中で一番表紙のデザイン・雰囲気が好きです。

ハイレベル理系数学のデメリット・注意点
シンプルにムズい
ハイレベルなので仕方ないのですが、ムズいです。例題から早速ムズいです。
1問目からすべてやろうとすると、ほとんどの受験生はすべてを理解する前に入試当日を迎えてしまうでしょう。

全部解く必要なんて無い。自分が強化したい分野とか、解きたいところを解けばええんやで
1冊目の問題集としては適してない
ムズいので、これを1冊目にいきなりやると普通は心が折れます。(知り合いでいきなりやってのけたバケモノがいたけど)土台が固まってない状態で手を出すと精神的にやられてしまいます。
まずは Focus Gold や、ハイレベル理系数学をもう少しだけかんたんにした「やさしい理系数学」(通称: やさ理)などをやってから挑戦するのが現実的です。

やさしい理系数学とありますが、あくまで「(ハイレベル理系数学よりも)やさしい」という意味だとおもいます
解答解説は(良くも悪くも)シンプル
ハイレベル理系数学の解答解説は、河合塾っぽいシンプルでクセのない書き方になっているため、解説として読む場合はあまり親切ではありません。
書かれているシンプルな解答に至った背景などは基本的に省略されており、「解答を読んでテメーの頭で考えやがれ」というスタンスになっています。
解答を読めば分かると言うよりも、解答を読んだ上でウンウン考えることが求められます。(それが勉強ってもんなんだけどね)
ハイレベル理系数学のおすすめの使用方法
「この問題が合否を分けます!」という類の問題ではなく、「コレが解ければ数学で圧倒的に差がつけられます!」というレベルの問題であることは事実なので、ハイ理をやるべき人というのはそこまでいません。
それをふまえて、この参考書は次のような人が利用すると良いのではないでしょうか。
数学が楽しくてしょうがない!難しい問題を色々なアプローチで美しく解きたい!!という数学欲に溢れた、すこし余裕のある受験生が趣味でやるのがよいでしょう。
定石としておさえておきたい問題もあるので、例題や演習問題を解いてみて、分からなかったら解答を読み、理解するためにウンウン考えることが大事です。
ハイ理が解ける人って数学がすでに得点源であることが多く、入試というゲームで勝つことを考えるならば、ハイ理をやるよりも理科や英語の勉強に時間を割く方がコスパ良かったりします。
一方でやって損はない、面白い数学問題集であることも事実ですので、このへんは時間やモチベとよく相談して決めましょう。

残された時間と相談しよう。