高校化学の勉強法について書いてみる

今回はリクエストがあったため、自分の覚えている範囲で化学について色々書いていけたらなぁと思っています。

高校化学について

まず、高校で習う化学というのは、大きく3つの分野に分けることができます。

  • 理論化学: 物質の構成・状態・反応について高校生に理解可能な範囲で定性的・定量的にアプローチしていく分野
  • 無機化学: 単体や化合物についての個々の性質をみていく分野
  • 有機化学: 有機化合物の構造についてみていく分野
注意事項

後々述べますが、高校化学は突き詰めて理解しようとすると話がすぐに大学内容に突っ込んでしまうので、ある程度割り切って暗記してしまう方が効率がいい場合が多いです。受験対策では大人しく暗記して、大学に入って物性化学や有機反応論でも勉強するのがよさそうです。

典型問題を解けるようになれば勝ち

あと、これは入試の化学の話ですが、よっぽど難しい入試問題でない限り、(東大でさえ)出題される問題の大半は典型問題と呼ばれる類のものです。

つまり、みなさんはやったことある問題について、それを解けるようになっておけば基本的には十分ということです。
一部思考力が必要な問題もありますが、基本的には問題のパターンを見抜いて、それぞれのパターンに対して適切なアプローチを使えるようになれば入試は6割クリアです。

ということは、大まかな勉強の方法として、

  • 理解する
  • 演習する
  • 出来なかったところを理解する
  • 演習する

の繰り返しになりますね。

頼れる先生、参考書を見つけよう

正直な話、困った時や分からないときに頼れるものがあれば、化学は自分一人でどうにでもなる科目です。

サトゥー

頼れる先生、先輩を見つけるか、頼れる参考書、辞書を手元に置いておくと安心ですね

僕はこちらの参考書を手元においていました。わからないときはすぐに調べられるように。

計算ミスが一番怖い科目

入試の化学は、計算ミスが死ぬほど恐ろしい科目です。
小数の掛け算とかめっちゃたくさん出てくるから、計算ミスはどうしても避けられないんですが、それでも減らしていく必要があります。

サトゥー

わかっている問題を計算ミスで落とすとか悲しいよね、マジで

ということで、普段から計算には慣れて、感覚を掴んでおきましょうね。
電卓を使うなとは言いませんが、入試本番ではある程度の計算力も要求されるということは忘れずに。

理論化学について

まずは理論化学について見ていきましょう。理論化学は理解が非常に重要な分野です。

ビジュアルでイメージできるレベルの理解を!

経験上、理論化学で苦戦する人は、現象をイメージできていない人がほとんどです。
化学苦手な人って、実はめちゃくちゃ初歩の段階でコケてる人が多いんですよね。だからそこを越えればスーッと伸びる人が多くて。

こういった部分の対策方法は、

  • わかっている人に教わる
  • 分かりやすい参考書を読む

のどちらかしかありません。

一旦基礎に戻って、もう一度基本的な部分の理解を見直すのも一つの手です。

それぞれの単語について言葉で説明できるように

これは先に述べた、ビジュアルのイメージによる理解をより深めてくれるコツになります。
それぞれの単語について、自分の言葉でいいから説明できるようにしましょう。

サトゥー

例えば mol という単位。僕はバカだったので、高校2年生の頃、この概念を理解するのに半年かかりました笑

原子や分子といったちっちゃいものをツブツブの個数で数えると大変なことになりますよね。
でも、量関係を知るためには、計算が必要で、そのためには量を数える必要があります。
ツブツブの重さが違うので、グラムで数えるのはキツい。
ということで、アボガドロ定数 $6.02 \times 10^{23}$ 個のツブツブを 1mol として、1つのまとまりと見ることで議論しやすいスケールにしているんですね。

こんな感じで、それぞれのキーワードについて説明できるようになると強いです。

参考までに、説明できた方がよさそうなキーワードを並べてみます。全て自分なりに説明できるようになるといいですね。

  • イオン化エネルギー
  • 電子親和力
  • イオン半径
  • 極性
  • 結晶格子
  • 限界半径比
  • 化学結合
  • 状態図
  • 理想気体と実在気体
  • 状態方程式
  • 気体についての各法則
  • 蒸気圧
  • 浸透圧
  • 気体の溶解
  • コロイド
  • 酸塩基
  • 酸化還元
  • 滴定
  • 緩衝液
  • 電池と電気分解
  • イオン交換膜
  • 反応速度と平衡定数
  • 溶解度積

「定性的」「定量的」の2つの目線を

定性的、定量的という見方は、化学だけでなく今後の人生にきっと役立つものですので、ここで説明しておきます。

化学だけでなくサイエンス一般に当てはまりますが、定性的な目線と定量的な目線を持っておくことは非常に重要なことです。
「定性的」とは数字で表せない性質に着目した見方であり、「定量的」とは数字に基づいた見方である、と捉えておいてください。

例えば、ある反応の化学平衡について分析する時、
定性的には「ルシャトリエの原理」に基づいて議論すればよくて、
定量的には平衡定数を用いて計算で議論すればいいですよね。

この2つの目線を持っておくと、化学や物理でも、一般的な物事においても役立つはずなので、ぜひこの機会に意識するようにしてみてください。

あとはパターンです。

理解できるところまで理解したらあとは問題ごとのパターンをおさえます。

本質的には計算問題は全て比の計算に過ぎないんですが、そういう比の計算に大学受験生が苦しめられているのも事実です。
ですから、問題ごとにどうやって立式すべきか、なぜここに着目したのか、といった基本的な部分の理解を徹底したいところです。

僕はあまり使いませんでしたが、「重要問題集」みたいなので経験値を積んでいくのもアリだし、

ちょっと背伸びをして「化学の新演習」をやるのもアリです。

もっと背伸びしたければ「100選」なんかもアリです。

サトゥー

僕は問題集については、学校で配られた「重要問題集」も軽くやりましたがすぐに飽きてしまい、結局「新演習」と「100選」をやっていました。新演習は問題が豊富だしそこそこレベル高めなので良いんですが、解答解説に誤植が多めなのと無機がマニアック過ぎるのがキズです。サイズ感はかわいくて好きでした

無機化学

無機化学は大きく次の4つに分けられます。

  • 反応理論(今回は面倒なので理論化学とします)
  • 非金属元素
  • 金属元素
  • 系統分析(通常は金属元素に含まれますが、めっちゃ頻出なので独自の対策をした方がいいです)

正直、暗記ゲーです。

おそらく理系の入試科目の中で一番付け焼き刃のきく科目ではないでしょうか。

サトゥー

多分本気出せば2週間くらいでプロになれます。方法は簡単です。新演習の無機全部解けるようになってください覚えてください

僕は実際この方法で強引に頭に叩き込んだらできるようになったのが事実なんですが、この記事にそんなこと書くわけにもいかないので。なんとか分かりやすく、参考になる情報を提供いたします。

そもそもなんで無機が暗記になっちゃうかっていうと、高校の内容だと説明できないような現象が多いからなんですね。

おそらく大学で習う物性化学という科目でこの続き的なところに触れていくと思いますが、正直物性化学の基礎習ったくらいでは腑に落ちないくらい、よくわからん点がいくつも存在するような分野です。興味ある人間以外は深入りは避けましょう。笑

語呂合わせで叩き込もう

ネットをちょっと調べてみると、こういうクソみたいな最高の語呂合わせが転がっています。

理想気体の状態方程式(PV=nRT)
プロモーションビデオ(PV)をn(n)さんがリツイート(RT)しました。

http://chem.chu.jp/goro2.html

流石に理想気体の状態方程式くらいは覚えているだろう…って感じもしますけども…
とにかくどんな方法でも良いので、頭に叩き込みましょう。

サトゥー

ちなみにですが、語呂合わせは自分で作ると意外とすんなり覚えられます。僕も受験生当時、友人と語呂合わせを作りまくって覚えていました。内輪ネタであるほど、自分ごとであるほど覚えやすいです。僕らの作った語呂合わせは内輪ネタ・下ネタのオンパレードなので紹介はしませんが、参考までに。

有機化学

有機化学は、次の3パターンくらいに分けて考えましょう。

  • 高分子以外の構造推定
  • 高分子の知識
  • アミノ酸の決定
サトゥー

アミノ酸の配列決定は構造推定に飽きてくると楽しいです。暇つぶしにやってみてください

正直、暗記ゲーです(2回目)

正直暗記すれば終わりなんですが、それを言ってしまうと元も子もないので…

理解したいなら電子の動きを追え

これは大学内容に片足どころか両足を突っ込んでいるのですが、有機化学の反応は電子の動きを追うと、高校生でもある程度理解できます。

参考までに、僕が高校3年生の時に読んでた本を。

高校生の僕でも7割くらい理解できるようになっています。暇つぶしにどうぞ。
暗記したくないよぉぉっていう理系に現実逃避のためにオススメしてます。

構造推定はやればやるほど強い

構造推定(構造決定)の問題は、正直言って経験値勝負です。個人的には、現役生と浪人生の間で一番差がつく分野なのではないかと思っています。

  1. 正確に解くための経験値
  2. 早く解くための経験値

の2つがあります。1ができるようになってくると、2もできるようになってくる仕組みですね。

サトゥー

プロになると、分子式聞いただけで答えにたどり着けますがそこまで求めてないです

官能基をちゃっちゃと覚えて、あとは問題解きまくって勝負です。その都度覚えていきましょう。
新演習くらいのレベルになってくると、構造推定のテーマとして(普通の高校生にとって)未知の反応が出てきます。(ディールス・アルダー反応、メタセシス反応など…)
知らない反応については、問題文からヒントを読み取って構造を推定する必要がありますね。そこは思考力勝負。

まずは不飽和度の計算!

僕は高校の先生に教えてもらったのですが、参考書とかにあまりしっかりまとめられていなかったのでここでメモっときます。

不飽和度の計算

Cを炭素原子の数、Hを水素原子の数、Xをハロゲン原子の数、Nを窒素原子の数として
$$\frac{2 \mathrm{C} + 2 – \mathrm{H} – \mathrm{X} + \mathrm{N}}{2}$$

分子式がわかったら何よりも先にこの不飽和度を計算しましょうね。
不飽和度 1 が二重結合や環 1 個の存在に対応しています。

サトゥー

不飽和度 2 だと、三重結合 1 個か二重結合 2 個か。もしくは二重結合と環か。みたいな。

ベンゼン環は不飽和度 4 です。経験上、不飽和度 4 以上の場合はベンゼン環がある場合が多いです。
特に脂肪族化合物系は不飽和度計算しておいたほうが、候補を書き出す時に整理しやすくて楽です。圧倒的に。

高分子化合物について

ここも頑張って覚えるしかありません。結構ないがしろにされがちですが、入試ではよくネタになります。

サトゥー

アミノ酸も、僕は頻出10個くらいは構造まで覚えていました。(正直不要ですが)何事も覚えてた方が早いんだよね。

無機化学よりもパズルっぽいのである程度覚えやすい気がします。
無機有機はとにかく、問題解きまくって、その都度覚えていくイメージで固めていきましょう。

以上。

コメント返信

河合塾

河合塾で一浪している京大医学部志望のものです。
完成シリーズの化学Tテキストをもらったのですが、理論の勉強をする際に、基礎シリーズの化学Tテキストを完璧にするべきですか?それとも完成シリーズの化学Tテキストを完璧にするべきですか?
数学などもあるので両方するのは時間的に厳しいです。

サトゥー

私は完成シリーズ以降Tテキストを利用していないため、完成シリーズの化学のテキストがどれくらいのものなのかがわからないのですが…(確か私のコースでは「ハイパー東大化学」というテキストを使用しており、それとは別に100選と模試の過去問を主にやっていました)
基礎シリーズの化学のテキストがもし完璧になっていないなら、基礎シリーズのテキストをしっかり仕上げるのはアリだと思います。化学って問題集だけの解説だとなかなか理解を深めにくく、わかっている人の解説があると効率よく勉強ができるイメージがあるので、授業時間を大切に頑張ってください。
はじめに申し上げました理由の通り、どちらをすべきかの具体的なアドバイスはできません、ご了承ください。
受験勉強頑張ってください。


まりも

はじめまして。河合塾で一浪しているものです。いつもプログの更新楽しみにしています!
先日模試が返ってきたのですが、化学の点数が手応えでは9割ぐらいだったにもかかわらず6割程度しかありませんでした。
この手応えと実際の得点の差が化学では特に頻繁にあります。
おそらく実力不足であると思うのですが、どのように化学を取り組んでいけばいいでしょうか。

サトゥー

いつもありがとうございます!今後も勉強に飽きた時の暇つぶしにでもご利用くださいな。
うーん、原因がイマイチわからないのですが、具体的にどのような点がズレているのでしょう?
得点がずれるということは、何らかの「手応え」と「実際」の差があるということが考えられます。おそらく何か特定の原因があるのでしょう。
まずはそこを「実力不足」という曖昧な表現ではなく、「どういう分野においてどの点において実力不足なのか」明確にする作業から始めましょう。
もしかしたら問題文を最後まで読まないせいで思わぬ見落としが生まれてしまい、ミスが発生しているのかもしれませんし、単なる計算ミスなのかもしれません。
化学だったら価数を考慮できていなかったりとか、そもそも現象をイメージできてなくて、勘に頼っているところがあったりとか。
私の方で具体的な原因は特定できないため、この返信で具体的な対策について述べることはできないのですが、「できない」「わからない」があったら、まずは限界まで掘り下げてみて、原因を探り当ててみると、自ずと解決策は見えてくるものです。


この記事を書いた人

サトゥー

東大学際情報学府M1。情報科学と教養の海に溺れています。面白いことをやるのがすきです。